古民家再生
家の記憶を引き継ぎ、家族の想いを大切にする住まい
■故郷の風景
やまとはくにのまほろば
たたなづくあおがきやまごもれる
やまとし うるはし (古事記)
わたしたちが故郷を想うとき、思い浮かべるのは風景です。自分が育った地域での風景です。その風景に自分のアイデンティティを求めるのではないでしょうか。家造りは既存の風景の中に、新しい風景を造りだします。そのとき、新しい「まほろば」を造りだしてい
きたいものです。
■2通りの再生手法
①現地再生
古い民家があった同じ場所で再び、住まいとしての機能を更新させる手法で、解体せずに改修したり、また一度、解体して再び組み上げたりする手法です。民家が、壊されずに再び、同じ場所で存在し続けることの意味は関係者以外の地域の人々にとっても、心のよりどころとしての風景、また文化の永続性としても大きい影響があります。
②移築再生
古い民家を全く別の場所に移して、再び組み上げる手法です。古い家の持ち主と新しい持ち主との縁が大切になります。ただ、お金があり古民家が好きだからと言って、東北の民家を九州に移築するのは、いけません。地域の文化財産としての民家を、全く文化も風土も異なる地域に移すのは文化の破壊につながります。同じ地域での民家の移築再生を行いたいものです。
古民家を訪ねる楽しみ
特に木造架構を学べることにわくわくします。丸太梁の架け方で、その家の歴史が分か
ります。また、使い物にならないほど曲がっている材を上手に使っている家に出会うとき
などには、つくづくと匠の先達の技の素晴らしさに頭が下がります。また、金物を使わずに建具を施錠する細工などには、知悪の豊かさを感じます。
また、古民家が建てられてから現代までの歴史に思いを馳せることも楽しいものです。その家を建て、維持してきた職人衆、またその家の中で営まれてきた幾世代にも渡る家族の物語。そして、幾時代かを経てきた地域の歴史など。いろいろなところで思わぬ発見が出来、ほんとうに古民家を見学させていただくことは楽しいものです。