現代農家のあり方を求めて
現代農家の特徴は
地域の寄り合い空間(座敷)を確保しながらの三世代住居である。そして家族団欒の空間、機能的な作業動線の確保、また既存住居をどうするかがポイントとなる。このとき、二階建てにする場合は各世代の寝室空間が縦に重ならないようにすることは当然である。そして農家である以上、専業、兼業にかかわらず納屋・倉庫は必要となる。
①母屋を残しながら別棟で計画する
-大屋根の家(専業)-
既存の母屋はまだ丈夫なので、ご両親の寝室と座敷という機能だけにして家族団らん・水廻り空間は渡り廊下でつないだ新しい家に移し、全体で家としての機能を満たした。母屋が残っているので、各寝室空間は離れており問題は生じないし、盆正月には若主人のご兄弟も気兼ねなく思い出残る実家に帰ることが可能となっている。
大屋根の家
②北側空間を天窓で明るく計画する
-黒壁の家(兼業)-
この家では既存母屋は老朽化のため取り壊され、同じ場所での建替えだった。敷地が限られているため、南側に玄関・座敷・ご両親の空間をとり、北側に家族団らん・水廻り空間を取らざるを得なかったが、天窓を多用して北側の陰気さを解消した。またパッシブソーラーを導入して寒さ対策を図った。ご両親の寝室部分は平屋で計画した。
黒壁の家
③中庭で計画する
-元山寺柿の家(兼業)-
比較的新しい母屋にはお母様がお住まいで、地続きの隣の土地でのリタイア後を考えた住まい造りである。敷地の関係上、納屋を南に配置し、平屋の二間続きの座敷そして中庭を挟んで居間・食堂、2階に各寝室を設けた。座敷の一つにはお母様の寝室にもなるよう考え、両者を繋ぐスペースを水廻りとした。当地周辺も市街化が進んでいるが中庭の採用で外回りだけを施錠し、中庭部分の窓は開放することで防犯を考えながらもプライバシーを気にしないですむ住まい方が可能である。
元山寺柿の家
④リタイア後を楽しむ家
-椿垣の家(専業)-
古く老朽化した家の建替えである。ご夫婦で農業をされているが、いつリタイアしても良いような住みやすい家を目指した。子供さんたちは遠方で所帯を持たれているが、盆正月にお孫さんを伴って帰省しても問題ないように大きめに計画した。
椿垣の家